ゲシュタルト心理学(Gestalt psychology)は心と脳(身体)の関係を問う心理学の一派である。特にこころが脳の個々の領域に還元出来るものではなく、またその個体に特有で自己組織的な性格をもつものであることを主張する。「ゲシュタルト」はドイツ語で形態(shape)や像(figure)を意味し、「要素の集合体では置き換えられない全体それ自体」というニュアンスが含まれている。また、ゲシュタルト心理学派の提唱したゲシュタルト効果(the Gestalt effect)は、私たちの様々な感覚を支える能力を意味し、例えば視る際の認識対象が直線や曲線の単なる集合体ではなく、視界として立ち現れる効果を指す。
用語の起源[]
部分よりも全体を重視するアプローチはゲーテ、カント、マッハらの、大陸系哲学に伝統的なものであり、用語の登場は19世紀のブレンターノ学派に属するフォン・エーレンフェスの近代哲学・心理学の文献に遡る。また、ゲシュタルトという言葉を広めたのはゲシュタルト心理学の祖であるマックス・ヴェルトハイマーの功績である。ヴェルトハイマーが特に主張したのは、ゲシュタルト(すなわち全体性)が知覚において最優先されるということである。ヴェルトハイマーは、エーレンフェスのゲシュタルト質(Gestalt-Qualität)というアイデアを踏まえ、知覚という現象は、要素の集合から結果的に立ち現れる「副産物」ではなく、むしろ知覚現象があるが故に構成する下位要素を認識可能であると主張した。